部門異動の前後がじわじわしんどい理由と、それを一人で抱え込まないためにできること

部門異動が決まったとき、「よし、気持ちを切り替えよう」とすぐに前を向けた人は、どれくらいいるでしょうか。

多くの場合、異動が決まった瞬間から、本当の「しんどさ」が始まります。

新しい部門への期待と不安が入り混じり、引継ぎ作業や挨拶回りで日常のリズムが崩れ、気づけば家でも職場でも「なんとなく消耗している」状態に陥ってしまう。

のりさん自身も、そんな時期を経験しました。

夜、帰宅前に玄関前で立ち止まる男性のイラスト
目次

「たった20分の帰宅の遅れ」が、こんなにズシリと来るとは

部門異動が決まったある日の夕方、書類の整理・荷物の移動・新しい部門の責任者への挨拶回りをしていると、気づけばいつもより20〜30分ほど帰りが遅くなってしまいました。

「たった20分」

と思うかもしれません。

でも当時の我が家には、保育園に通う幼い子どもが2人いました。

お迎えから始まり、食事の準備に介助・お風呂に入れる・就寝の準備まで、夫婦が2人そろって動いてやっと回る毎日。

その「2人分の力」からのりさんが抜けた20分間、妻は1人でその全てをこなしていました。

帰宅すると、妻は何も言いませんでした。

でも、のりさんの胸にはじわじわと罪悪感が湧いてきました。

のりさん

あのとき「ありがとう」と言いたかった。

でも、言えなかったのです。

なぜ「感謝を感じているのに言葉にできない」のか

感謝は確かにある。

それなのに、言葉が出てこない。

この経験、心当たりがある方も多いのではないでしょうか。

実は、これは「薄情」でも「不器用」でもなく、ストレス状態にある脳が引き起こす、神経科学的に説明できる現象です。

ストレス下では、前頭前皮質の働きが低下する

感情を言葉にしたり、思いやりある行動を取ったりするのは、前頭前皮質(ぜんとうぜんひしつ)という脳の部位が担っています。

ところが、ストレスが高まるとコルチゾール(ストレスホルモン)が分泌され、この前頭前皮質の機能が著しく低下することが研究で示されています(Girotti et al., 2017)

つまり、ストレスが高い状態では「ありがとう」の一言を口にするための、認知的・感情的なリソースが枯渇しているのです。

感謝を「感じている」のに「言えない」のは、意志の問題ではなく、脳の状態の問題です。

異動の「引継ぎ期」は、特にストレス負荷が重なりやすい

部門異動の前後はただでさえ慌ただしいのですが、心理学的にも特殊な負荷がかかる時期です。

人は職場での役割に、強くアイデンティティを結びつけています。

「自分はこの仕事をする人間だ」という感覚が、異動によって揺さぶられるのです。

研究によれば、変化が「自分にとって大切なものへの脅威」として認知されると、ストレス反応が強くなることが分かっています(Wisse & Sleebos, 2016)

新しい職場への不安、慣れない業務への緊張、新しい人間関係への適応——。

これら複数のストレス要因が同時に重なるのが、異動の引継ぎ期の特徴です。

「なんとなくしんどい」のは気のせいでも弱さでもなく、それだけの負荷がかかっているからです。

引継ぎ期に感謝を言えないメカニズムを示した概念図

一人で抱え込まないためにできること

では、どうすればよいのでしょうか。

のりさんが振り返って思う、「あのときこうしておけばよかった」を3つお伝えします。

STEP
まず「言えなかった自分」を責めない

感謝を言葉にできなかったのは、ストレス下での脳の状態によるものです。

「言えなかったことへの罪悪感」を手放すことが、最初のステップです。

自分を責め続けることは、さらにストレスを高めるだけです。

小さな一言でいいんです。

翌朝の「昨日はありがとう」でも、十分ですよ。

STEP
「消耗している」と誰かに伝える

のりさんが当時もっとも後悔しているのは、誰にも話せなかったことです。

職場ではプライベートな自分を出さず、家では心配をかけたくない。

そうして「一人で抱える」ことが、消耗をさらに深めていきます。

研究では、社会的サポートがあると、職場の変化によるストレスへの対処力が高まることが示されています。

完全に解決しなくてもいいんです。

「最近ちょっと疲れてる」と誰かに話すだけでも、脳の負荷は変わります。

STEP
キャリアの節目に「第三者の視点」を借りる

異動という「キャリアの節目」は、自分の働き方やキャリアを立ち止まって見つめ直すチャンスでもあります。

しかし、職場ではなかなか話せないし、家族に全てを話すのも難しい。

そんなときに有効なのが、キャリアの専門家への相談です。

利害関係のない第三者だからこそ、本音で話せる。

職場でも家庭でも言えなかった「本当の気持ち」を整理する場として、活用している人が増えています。

まとめ|環境変化は脳への負担!一人で抱える必要なし!

朝のコーヒーを持ちながら穏やかな表情でいる男性のイラスト

部門異動の前後がしんどい理由は、気持ちの弱さではありません。

役割の変化がアイデンティティを揺さぶり、複数のストレスが同時に重なり、脳のリソースが枯渇していく——そういう、誰にでも起こりうる神経科学的なプロセスです。

「感謝を言えなかった」あの夜のことを、今でも時々思い出すことがあります。

あのとき誰かに話せていたら、少し違っていたかもしれない。

そう思うからこそ、「一人で抱え込まない」という選択肢を、ぜひ自分に許してあげてほしいと思います。

のりさん

最後まで読んでいただき、ありがとうございました♫

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記事本文でご紹介したキャリアの節目に「第三者の視点」を借りる方法として、30~40代のミドル世代にのりさんがおすすめしたいのが、

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のりさん

一人で悩むより、専門家に話してみる方が早いはず。
ぜひ試してみてください♫

参考文献

Girotti M, Adler SM, Bulin SE, Fucich EA, Paredes D, Morilak DA. (2017). Prefrontal cortex executive processes affected by stress in health and disease. Progress in Neuro-Psychopharmacology and Biological Psychiatry, 85, 161–179. PMC5756532

Wisse B, Sleebos E. (2016). When change causes stress: Effects of self-construal and change consequences. Journal of Business and Psychology, 31, 249–264. PMC4856724

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この記事を書いた人

アラフフィフ世代で二児の父。
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